〈寄稿〉車道がストリートプラザに、公道占有使用プログラム始まる
ランドスケープデザイン会社 PLACE 幸本温子氏
ポートランドといえば、歩道やパークレットを利用したストリートの賑わいづくりが有名ですが、COVID19影響下でさらに柔軟な公道の利用が進んでいます。経済活動再開が少しずつ始まるなか、現在、Health Businesses Permitを利用した屋外事業スペースが街のあちこちに出現し始めています。これはポートランド市交通局(PBOT)が管轄する公道の占有利用許可プログラムで、11月1日までの暫定許可として、事業者に対し無料で公道利用の許可証を発行するものです。事業者各自での申請もできますが、複数の事業者間で合意形成し、緊急車両等のアクセスを確保したうえで、一般車道と歩道を含む公道を歩行者天国化しオープンスペースとして利用することもできます。
とはいえ、複数の事業者のニーズをくみ取りつつ、住民や近隣事業者にも相互利益となるような歩行者天国の実現には多くの課題があります。そこで、ポートランド市内の建築会社またはランドスケープ会社が、それぞれのストリートのニーズに沿ったデザインの可能性を模索するためのサポートチームとして、PBOTとポートランド州立大学所属の公共領域研究機関Center for Public Interest Designとともに、市内各地のストリートの事業者と協議を重ねています。私の勤務するデザイン会社PLACEでは、SRGアーキテクツとともにポートランド北東部エリアにあるアルバータストリートとキリングワースストリートの二箇所での事例に参画しています。
レストラン、カフェ、小売店など、事業者によって優先事項が違い、例えばレストランは屋外になるべく多くの飲食スペースを確保するため車道やパーキングスペースの転用に積極的であるのに対し、小売店では顧客が店の近くに車を停めて買い物ができることが重要であるという意見が出ています。また、事業者占有使用以外のスペースが担保する公共性についても話し合われています。立場やニーズが違うなか、どのように合意形成を進め、COVID19の影響で苦しむ地元事業者たちにこのプログラムをどう有効活用してもらうのか、行政、デザイナー、事業者で検討している最中です。
事業者救済の観点から早期実施を目指しているため、この意思決定のプロセス時点で近隣地域住民や事業者等など幅広い関係者を巻き込むことが難しいのですが、歩行者天国が実施された場合にはコミュニティアウトリーチ用のスペースを設置し、フィードバックを集めたうえで、必要なデザインやオペレーションの改善を行う予定です。Health Businesses Permitは期間限定の措置ですが、ストリートペインティングや屋外でのアルコール類の提供も許可されるなど実験的な内容となっており、今後のポートランド市の公道活用に新たな可能性をもたらすものとなりそうです。
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